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道徳ある経済ーソーシャルビジネスとは1

Aug 29, 2020 | social business

利益最大化を目的とした従来の株式会社のような事業形態から、ビジネスを手段として社会課題を解決するソーシャルビジネスが世界中で注目を集めています。社会課題を解決するビジネスを営む起業家を「ソーシャルアントレプレナー」と呼び、そしてその事業を「ソーシャルビジネス」と呼びます。

今回は今注目が集まっているソーシャルビジネスに焦点を当て、実際の事例を交えながら解説します。またタイトルにある「道徳ある経済」の意味ですが、ソーシャルビジネスを考える上でよく取り上げられる言葉であり、日本人が昔から教わってきた教訓と繋がるところがあります。

経済なき道徳は戯事であり 道徳なき経済は犯罪である。
二宮 尊徳(金次郎)

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ソーシャルビジネスとは

ムハマド・ユヌス氏

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2006年ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏が、近代のソーシャルビジネスを提唱しました。バングラデシュ出身の実業家であり、不可能であろうとされていた貧困層に向けての銀行「グラミン銀行」を創設し、持続可能なビジネスを多数排出してきました。

ソーシャルビジネスは事業(ビジネス)である以上、収益(Surplus)を得ることは追求するが、その収益は出資額以上は出資者には還元することはなく、あくまでも事業に再投資されることを前提とする。 ムハマド・ユヌス

ソーシャルビジネスとは、株式会社のように株主の利益最大化を会社の目的とせずに、貧困や教育といった「社会課題の問題解決をする」ことを、事業の目的とする組織を指します。

補足説明を付け加えると、

現地NGOと外資、特に外国籍企業との50%出資の合弁形態をベースに、社会的諸課題の解決をミッションとする事業(ビジネス)を、収益(Surplus)の確保を前提に行い、収益が得られた場合には、出資者には出資額を超えた額を配当形態で支払われることはなく、あくまでソーシャル・ビジネスに再投資されることとなる。

次文は彼の考える有名な言葉です。

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現代資本主義では、ビジネスを営む人間は一次元的な存在として描かれており、利益を最大化することが唯一の目的だとされている。しかし、現実の人間は多元的な存在であり、必ずしも自己利益を追求するだけではない。

すべてが他者の利益のために行われる。つまり人間の利他心に基づくビジネスこそ、私のいう「ソーシャル・ビジネス」である。「損失なし、配当なしの会社」である。

ユヌス氏によると、利益最大化を目的として事業を営む一般企業が行う事業活動と、ビジネスの手法を用いて社会課題の解決に取り組むソーシャルビジネスの大きな違いは事業活動の目的(ミッション)にあるようです。

日本におけるソーシャルビジネスの捉え方

経済産業省「ソーシャルビジネス研究会」では、ソーシャルビジネスを(1)社会性(2)事業性(3)革新性の指標を持って定義しています。

経済産業省「ソーシャルビジネス研究会」

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(1)社会性
現在解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること(環境問題、貧困問題、少子高齢化、人口の都市への集中、高齢者・障害者の介護・福祉、子育て支援、青少年・生涯教育、まちづくり・地域おこし など)

(2)事業性
(1)のミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進めていくこと。

(3)革新性
新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組を開発すること。また、その活動が社会に広がることを通して、新しい社会的価値を創出すること。

ソーシャルビジネス支援資金(企業活力強化貸付)

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日本政策金融公庫では、NPO法人や、ビジネスを手段として社会課題を解決するソーシャルビジネスを営む企業へ向けて「ソーシャルビジネス支援資金(企業活力強化貸付)」融資を実施しています。借入の際の担保・保証人ついて、一定の条件を満たせば代表者保証が不要になるケースもあります。

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ソーシャルビジネスマーク

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企業、NPO、住民、行政、公的機関など、さまざまな主体が手を取り合って、地域社会が抱える課題の解決に取り組む様子を、ソーシャルビジネス(Social Business)の「S」を用いて表現しています。

廃棄されたフィッシュネットから誕生したスケートボード

BUREO(ブレオ)は、廃棄された漁網をリサイクル製品に転換させクールなスケートボード開発し、ソーシャルビジネスを展開する南米チリ発の新興スタートアップ企業です。

カリフォルニア州初のBコーポレーション(ベネフィット・コーポレーション)となったパタゴニアは、持株会社「パタゴニアワークス」を設立し、環境に肯定的な利益をもたらす責任ある新興企業を援助する内部基金「TIN SHED VENTURES」を設立しました。

Bureo(ブレオ)はTIN SHED VENTURESから出資を受けています。

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*2016年「$20 Million & Change」から「TIN SHED VENTURES」へ改名

ビジネスモデルはスケートボードとサングラスを廃漁網から製造&販売から収益を得ることに加え、必要な原材料を提供してくれる漁業コミュニティに恩恵をお返しするようにデザインされています。

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またブレオの使命と調和するリサイクル、環境教育、コミュニティの力づけの3つを支援する草の根非営利団体〈ファンダシオン・エル・アーボル〉と協働しながら、持続的なビジネス、コミュニティ作り「ネット・ポジティバ」を作っています。地域の課題解決(雇用)と環境問題を同時に解決し、持続可能なビジネスを展開するお手本となるスタートアップです。

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Photo: Bureo

ブレオの創業者、ベンは次のように話します。

漁師が釣った魚をある値段で売るのと同じように、これらのチームはネット・ポジティバを通じて漁網を収集し、ブレオに売るのを彼ら自身のビジネスにすることができる。漁網を回収することで収入を補足できるんだ。最終的には、すべてを彼らに手渡したい。いま僕がここにいるのは彼らを指導するためだけだ。

まとめ

モノ売りからコト売りへ。
ソーシャルビジネスは、先進国を中心に国を挙げたムーブメントが起きています。日本でもビジネスにおける成功が再定義されるのも間近かもしれません。