欧州、欧米先進国でいち早く進む環境問題取り組みに向けたレジ袋削減、有料化の流れを汲み、令和2年7月1日から日本全国でもプラスチック製買物袋の有料化がスタートしました。
この取り組みは、あくまでマイバッグを持参する国民のライフスタイル変革を促すことが目的であり、その売上の使途については事業者が自ら判断して構わないそうです。なお、有料化したプラスチック製買物袋の売上を、環境保全事業や社会貢献活動に寄付している先行事例も存在しています。
今回はSDGs先進国、ドイツで話題を呼んでいるお金が貯まるエコバッグ「The Penny Give-Bag」についてご紹介します。
THE PENNY GIVE-BAG(ザ・ペニー・ギブ・バッグ)
画像:Wikipedia
ペニーはドイツを拠点とする庶民的なスーパーマーケットであり、3,550ストアをチェーン展開しています。1989年からはRewe Groupの傘下となっています。
CO2増加、プラスチックバッグによる海洋汚染環境問題が深刻化する状況等を受け、2015年9月、国連サミットでよりよい世界を目指す国際目標「持続可能な開発のための2030アジェンダ=SDGs」が設定されました。
2018年以前のドイツでは、エコバッグを使う習慣は国民には根付いておらず、多くの人々がプラスチックバッグを利用して買い物を行っていました。年間使用量を概算すると、おおよそ16億枚、1分間に約3,000枚ほど消費されている計算となります。
https://www.bmu.de/wenigeristmehr/
そして2019年3月27日、欧州議会は海洋汚染環境問題保護を目的にした使い捨てプラスチック製品を禁止する法案を承認しました。
ペニーはレジ袋削減に対応するべく、ある施策に乗り出します。多くの事業者がレジ袋有料化に移行していた中、ペニーはエコバッグ持参でお金が貯まる施策=買い物ごとに10セントがキャッシュバッグサービスが受けられる逆張りなキャンペーンを打ち出しました。
それが「THE PENNY GIVE-BAG」です。
10セントのキャッシュバッグと10セントの寄付
プラスチックバッグ大量消費による環境問題を解消するべく、ペニーはドイツ・ミュンヘンに本社を置く広告代理店最大手「Serviceplan」と手を組み、今回の企画に取り組みました。
Serviceplan
消費者は買い物をする前にエコバッグについたバーコードを一度スキャンしてスーパーマーケット店内に入ります。買い物精算時ごとに10セントキャッシュバッグがされることに加えて、更に10セントは地域の社会活動を支えるローカルコミュニティへ寄付される仕組みとなっています。
欧州では企業が環境問題にしっかりと対応しているのか、といった消費者目線が厳しく、このような寄付行為は消費者の「環境問題に貢献している」といったメンタル要素を満たすことでも充足感を与えることができます。
キャンペーン開始後直ぐ、ドイツ全国のメディアで話題を呼び、開始2週間で600,000枚生産したエコバッグは即座に完売しました。消費者は総額70,000ユーロ節約できたことに加えて、その同額を地域の社会活動を支えるローカルコミュニティへ寄付することができ、またこの取り組みにより、710,000枚のプラスチックバッグ削減を実現できました。
仕掛け人「CHRISTOPH EVERKE」マネージングパートナー
「THE PENNY GIVE-BAG」の仕掛け人、CHRISTOPH EVERKE(クリストファー・エヴァーク)さんは、NEW YORK FESTIVALS AMEAWARDSの取材で次のように話します。
CHRISTOPH EVERKE
MANAGING PARTNER SERVICEPLAN, GERMANY
記者:バッグを持参するごとに10セントの割引、更に10セントを社会福祉組織へ寄付するこのキャンペーンを実施するにあたり、どのようにクライアントへ理解をしてもらったのでしょうか?
(How did you convince the client of the idea for the campaign and the concept of giving both a discount to shoppers and a donation to a worthy cause?)
クリストファーさん
率直に言いますと、この話しを提案した際、クライアントとの交渉には一切苦労しませんでした。なぜならペニーは過去に地域福祉施設へ寄附を行っていた実績があったためです。実施するには意義あるアイデアだと、両者共に同じ理解度で合意し、すんなりと前へ進むことができました。私たちに必要だったのは、寄付先を行うリストを拡張することだけでした。Christoph Everke: To be honest, it didn’t take much to persuade the client. We were immediately on the same page that this idea would be something worth developing. Since Penny was already donating money to various organisations, all we needed to do was extend this list.
記者:キャンペーンを実施する際のクリエイティブ、また物流のことで直面した課題は何ですか、またどのようにその課題を乗り越えていかれたのでしょうか?
(Would you share any creative and logistical challenges you faced and how you solved them?)
クリストファーさん
クリエイティブ要素ではクラシックなキャンペーンだけは避け、エコバッグをデザインすることだけでした。ただし物流面では、レジで会計をする際のオペレーションを全て変更する必要がありました。また前代未聞のキャンペーンだったため、新しいエコバッグがどれほど消費者に受け入れられて購入されるのか、を見越すことにかなり苦労をしました。The creative challenge was to avoid thinking in terms of a classical campaign – we simply had to design the bag. However, logistically the entire cashier-process had to be changed. Additionally, it was challenging to forecast the entire promotion– because no one could foresee how the new bag would be accepted by customers.
記者:一番誇りに思っている結果は何でしょうか?
(What results were you most proud of and why?)
クリストファーさん
私にとっての一番の誇りは、たった1つのシンプルなアイデア次第で良い社会、習慣に変えられるといったことを提供できたことです。For me the most valuable result was proving that you can change a habit for good – with one simple idea.
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
グローバルな視野と、アイデアで社会課題を解決したドイツのエコバッグ「THE PENNY GIVE-BAG」を紹介しました。