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スマートシティを実装するブラジル・クリチバ市

Jul 24, 2020 | social business

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1980年代初頭、街中にゴミが溢れかえり収拾のつかなかった都市がブラジルにはありました。しかしある取り組みをきっかけに街は見違えり、今では世界から注目されるスマートシティ(環境都市)として変貌を遂げました。

今回はブラジルで最もSDGsに力を注ぐサステイナブルな環境都市、CURITIBA(クリチバ、以下クリチバ)についてご紹介します。

サンバだけじゃない、ブラジル都市の素顔

クリチバはブラジル南部に位置する都市で、人口約185万人が住むブラジルでは南部最大の都市です。

国:ブラジル/州・県:パラナ州/市町村:クリチバ

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クリチバは金鉱産業として街が栄えました。1867年からは移民団の受け入れが始まり、イタリア人、ポーランド人、ドイツ人、ウクライナ人と、ヨーロッパからの移民が流入した結果、ブラジル南部の街並みは今でも欧州の名残があります。

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綺麗な街並みがある一方で、ブラジルでは貧富の格差が未だに激しく、ホームレスや貧困層の人たちが暮らすスラム地域「ファベーラ」地区が街の至る所に点在します。

最近ではファベーラを回る観光ツアーが開催され、国内外の観光客が足を踏み入れる機会も多くなっていますが、本来は現地ブラジル人でも立ち入ることを恐れるほどの場所です。

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Image:reddit:Rocinha, the largest favela in Brazil

Google社はファベーラの事実を伝えようと「Beyond the Map」といったプロジェクトを行い、自宅にいながら誰でもファベーラに行ったかのような擬似体験を無料で提供しています。とても良いプロジェクトなので、良ければパソコンでご覧になって下さい。

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スマートシティを作り上げた元市長は、建築家

クリチバ市長を3期勤めたジャイメ・レルネル氏は、元建築家出身です。自動車中心の都市政策ではなく、住民である人間を中心とした都市政策を押し進めた結果、市民からも多くの賛同を得て、スマートシティ実現に寄与しました。

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彼の都市計画では、徹底的に街のバリアフリー化を図り、チューブ型のバス停などを用いて効率的な公共交通システムを構築しました。その結果、クリチバ市民の85%以上が利用するようになり、世界有数の環境都市として栄えました。

今でこそ世界有数のスマートシティ、環境都市として大成功を治めていますが1980年代以前は街にゴミが溢れていたとても汚い街でした。

ゴミ買い_ゴミと野菜を交換することで街が変わった

クリチバ市のスマートシティ化を支えた影には、実は日本人の存在があります。クリチバはサンパウロに次いで日系人が多い都市であり、その数はおよそ3万人に及ぶそうです。

カリスマ、ジャイメ・レルネル氏の右腕として活躍した「中村ひとし」さんは大阪府立大学大学院を修了後、農業を行うためひとりブラジルへ移住しました。その後農業、造園の知識を活かして公園や街路樹づくりに携わるため、クリチバ市環境局長としてゴミ問題に取り組みました。

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Image:ニッケイ新聞

ゴミ問題を解決すべく彼が取り組んだことは、市民と協働し持続的に街が綺麗になる仕組み「ゴミ買い」プロジェクトです。

街に捨てられている、或いは家にあるリサイクル可能な空き缶、プラスチックなどのゴミを市職員が定期的に回収する日に持ち込みをすれば、野菜やフルーツなどの食料と交換できる仕組みです。ゴミ約4キロに対して、1キロの野菜と交換してもらえます。

本来ならゴミとして街に捨てられているものが、生活者の蓄えになることに加えて、リサイクル可能なゴミは価値がある=お金になることを市民に根付かせることに成功した結果、ゴミ分別にも大きな効果を発揮しました。

持続可能な循環型社会の良い事例として、国際連合人間居住会議で「世界一革新的な都市」として表彰されました。

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Image:Medium Green Guilt: Is Environmentalism Just for the Rich?

ニッケイ新聞のインタビューで、中村さんは次のように話します。

「ゴミを拾って綺麗にしましょう」と言わず、「ゴミを買います」と言い続けた。「買います」と言えば自分のためになると思って、皆一生懸命やる。言い方をちょっと変えるだけで結果が全然違う。

地域事情をわかっているリーダーに任せたほうが威厳が保たれるし、スムーズだと考え、地域のリーダー格にゴミ回収の呼びかけや野菜の分配を任せた。これが功を奏した。

ブラジル人心理への深い理解なくしてできない貢献だ。

まとめ

今回は世界でも有数のソーシャルグッドな街づくりに成功したブラジル・クリチバをご紹介しました。

またつい先日、日本政府が「スタートアップエコシステム拠点形成戦略」を発表し、日本でも市民を中心とした街づくりに注目が集まっていくことかと思います。