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【CSV】ソーシャルビジネスで会社は成長する

Jul 17, 2021 | social business

2013年、ハーバード大学ビジネススクールの教授Michael Porter(マイケル・ポーター)氏によりCSV経営が提唱され、ようやく日本でも認知が進んできました。ここで言う”CSV”とはパソコンのファイル形式ではなく、Creating Shared Value の略語で、日本語では「共通価値の創造」と呼ばれます。

CSVとは?
企業が社会と共有できる価値を創造すること。
社会課題への取り組みによる「社会的価値の創造」と「経済的価値の創造」の両立により、企業価値向上を実現すること。

C・・・Creating(創造する)
S・・・Shared(共通)
V・・・Value(価値)

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CSV経営が提唱される前までは、社会課題解決に取り組む「社会価値」と「経済価値」の両立はできない、すなわち両立が難しい(トレードオフ)関係が指摘されてきました。しかし、ポーター氏の提唱するCSV経営の考え方が2013年以降に普及するにつれて、企業のコア事業となるリソースを使って社会課題を解くことにより、新しい価値を創造し、循環型経済リターンを生むことへの期待、注目度が高まってきました。

ただ実はこの考え方、新1万円札になる日本の資本主義経済の父である”渋沢栄一”の考え方と同じでもあります。500以上の会社を立ち上げた功績、また財閥経済が主流であった時代から合本主義を唱え、広く社会から資本を集める株式会社に重点を置いていました。私利のためだけでなく、広く社会に利益を与える考え方だと捉えられます。

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「利益に走っても道徳がなければ駄目だ」
一方で「道徳があっても、利益が出て継続性がなければいけない」

渋沢 栄一

今回はCSV経営について、実際の事例を交えながら説明します。

CSRとCSVの違い

CSV経営のコアとなる考え方は3つのレベルから成ります。

1. Reconceiving Products and Markets
「製品と市場を見直す」
2.Redefining Productivity in Your Value Chain
「バリューチェーンの生産性を再定義する」
3. Cluster Development
「企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターをつくる」

よく混合されるCSR(Corporate Social Responsibility)とCSV(Creating Shared Value)ですが、根本的な取り組み方が異なります。

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(参照: Profitable Good)

CSR
💰 寄付
✋ ボランティア
🎁 慈善行為
🏢 企業財団
⏩ 本業から外れた事業
📺 マーケティング戦略

CSV
💰 利益創造
✋ 利害関係者との提携
🎁 競争的差別化
🏢 事業開発
⏩ 本業に沿った戦略的体制
📺 コア事業での収益化戦略

大きな違いは”優先順意”です。

例えばCSRの場合、本業とは異なる事業を余剰利益を使って行うことで、企業としての社会的責任を利益関係なく義務的に行う活動が多いです。一方でCSVはと言うと、会社のコア事業として社会問題の解決に取り組み、「利益を獲得する」ために社会的価値のある事業に取り組むことが大きな特徴です。会社のコア事業としてストレートに社会問題の解決に取り組むため、慈善行為であるCSRより、CSV経営は社会貢献の効果が高いと言えます。

次にCSV経営に具体的に取り組む例を上げてみました。

CSVを実践し儲かっている企業

持続的な消費、CSVを推奨するアメリカ・カリフォルニア州に本社を構えるアパレルプランド「Patagonia」です。本ブログで何度となく紹介しておりますが、創業時よりグリーンビジネスを実行し、環境保全に最も力を入れる企業でもあります。

パタゴニアの企業理念「地球を救うためにビジネスを営む」。例えば次の取り組みの「Worn Wear(新品よりもずっといい)」プロジェクト。本来であれば新品の服を売る方が当然利益は上がりますが、環境保全を啓蒙する活動としてリペアを無償で行う企画です。パタゴニア製品に限らず、修理が必要な衣服は全て無料でリペアしています。

(参照: Product Hunt)

日本では期間限定(2019年5月末から7月末)で、「Worn Wear College Tourと」題し、リペア車で大学キャンパスを周るキャンペーンも行っていました。

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またPatagoniaはアパレル企業ながら、食品産業にも参入しています。Patagonia Provisionsというブランド名でアメリカ本土では2011年から本格参入し、日本では2016年から始動しています。

プロビジョンズを手段として、我々はその方向を変え、新しい種類の未来に向かって踏み出す。地球を枯渇させるのではなく、修復し、風味豊かで栄養価の高い食品で満たされた未来。土壌の健康を構築し、動物の福祉を確実にし、農業従事者を保護する方法で食品が生産されることをたしかにするリジェネラティブ・オーガニック認証が広く適用される未来。要するに、私が話している食品は、問題ではなく、解決策の重要な部分だ。

– イヴォン・シュイナード、パタゴニア創業者
https://www.patagoniaprovisions.jp/pages/why-food-essay

特に注目をされるのが「リジェネラティブ・オーガニック(RO)農法」といった方策で農業に取り組んでいることです。農薬や人工肥料といった化学的な栽培方法は、気候変動の主要な原因のひとつであり、最大で世界中の年間温室効果ガス排出量の4分の1を占めています。

セスナで農薬を撒く様子

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(参照: Wikimedia Commons)

このような工業型農業から、健康な土壌を構築するリジェネラティブ・オーガニック(RO)農法に切り替えれば、農業を「問題」ではなく「解決策」へと転換できます。健康な土壌ははるかに多くの炭素を隔離するため、リジェネラティブ・オーガニック農業は気候変動の抑制を助ける重要な手段になり得る、とPatagoniaでは考えています。

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(参照:Patagonia Provisions)

まとめ

これからの時代を担う「ミレニアル〜Z世代」の特徴のひとつが、社会課題に対する強い関心です。CSRに特化した米国PR会社コーン・コミュニケーションズの調査(Z世代の男女1000人対象)によると、Z世代の約94%が『企業は社会的・環境的課題に取り組むべき』と考えています。特に地球環境に対する問題意識が強く、彼らのうち98%は地球環境の保護に関心を持つということがわかっています。

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(参照:Polar Bears on Thin Ice)

「社会課題を解決するために事業活動を行う」といった、本来の企業活動である基本原理をシンプルに実践することがCSVです。すなわちビジネスを手段として社会課題を解決するソーシャルビジネスは、CSVそのものであって、21世紀以降の働き方改革だと強く思います。