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見えない価値を可視化する気持ちのお金『理想通貨』とは?

Jan 28, 2022 | social business

何かサービスを受ける際やモノを購入する際には必ず価値を交換し合ってやりとりが成立します。資本主義の今日ではそれを「貨幣・通貨」といった”お金”を用いて行う商習慣は誰もが知ることです。お金が沢山あればそれだけ受けれるサービスも増えるし、購入できるモノも必然的に増えます。

ただ、18世紀後半にイギリスで起きた産業革命以降、本格的な資本主義経済が世界で普及してからは”お金を稼ぐ”ことが社会活動の一番の優先事項となってしまい、そのトレードオフで多くの弊害が起きてきたことは事実ではあります。

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eumo エゴシステムからエコシステムへ

例えば分かりやすい例を上げると、倫理や道徳観を無視をして大量生産する工場から汚水を垂らし流して海が汚れて魚の生態系のエコシステムが変わってしまったり、生産コストを下げるために過度な大量生産に企業が踏切り、結局は残りものを多く発生してしまう(フードロスなど)ことはニュースでよく聞く話しで容易にイメージできることかと思います。

こんな資本主義現代社会を生きる私たちですが、本来人間には「想いやり」といった利他の余白を保った気持ちがあるはずです。このような、貨幣では評価できない”気持ちを可視化”する取り組みが沖縄県宮古島にはあります。

今回はその思いやりを可視化する「理想通貨」について考えてみました。

いいコトをしたら、ちょっといいコト〜宮古島を想う気持ちのお金「理想通貨」〜

理想通貨を知ったきっかけは数年前に行われた「関空旅博」に参加した際、宮古島市が出展していたことを機に知りました。

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関西国際空港入り口で行われる「関空旅博」
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気持ちのお金「理想通貨」のチラシ
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エコアイランド宮古島職員の方々

理想通貨とは沖縄県宮古島島内だけで使える、いわゆる地域通貨です。環境保全、自然保護、文化の継承など、たくさんの人々が協力して「千年先の、未来へ」澄み切った海を皆んなで残し、ずっと住み続けられる島にするため始まった行政発のエコプロジェクトです。

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宮古島市「千年先の、未来へ。」公式ポスター

理想通貨のコンセプトムービー

理想通貨のコンセプトムービーです。なぜ、どのように理想通貨が生まれた背景の説明をプロジェクトリーダーの方がシンプルに伝えていたり、実際に島内協力店の事業者の人々の想いが出演した生の声をギュッとまとめられていて、非常に分かりやすいコンセプト映像となっております。

本来のお金にない価値、気持ちへの対価。人と人との気持ちをつなぐため、人間軸だけの考えでなく、理想通貨を用いて本来生かされている自然に感謝が循環する仕組みは本当に素晴らしいエコシステムだと感じます。

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理想通貨スキーム(参照:島の色公式ウェブサイト)

理想通貨の集め方

理想通貨は、自然、暮らし、人々をつなぐ通貨です。現在社会で使われている貨幣通貨のように、お金でお金を儲けるような仕組みにはなっていません。理想通貨は「エコ活」と呼ばれる地域行事、例えばビーチクリーンに参加したり、自分が持っているエコな知識を講演したりして、想いを広める活動を実施した人に与えられる地域限定の通貨です。

理想通貨に使われる「M」とは「MYAHK(ミャーク)」の通貨文字で「宮古島」を指します。

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宮古島の理想通貨「MYAHK(ミャーク)」

では具体的に理想通貨をどのようなイベントに参加して、集めるのか。

宮古島市が一般向けに公開しているエコ活イベントカレンダーに詳細が記載されており、自分が好きな活動へ自由に参加することで感謝の理想通貨を稼ぐことができます。

1M・・・エコアイランド推進課にて説明を受ける。
5M・・・社会福祉協議会のフードバンクに寄付をする。
・・・・・・クリーンセンタープラザ棟の利用新規登録をする
10M・・・(理想通貨が配布される)ビーチクリーンに参加する。
※1時間程度
・・・・・・・エコアイランド推進課出前講座にて配布する。
20M・・・(理想通貨が配布される)ビーチクリーンに参加する。
※2時間程度

宮古島市公式ウェブサイト

また活動を広める企画として「理想通貨配布×SNS企画」も昨年度より始まっているようです。(2021.10.11)現地の活動に参加することは必須条件となっておりますが、その活動状況をSNSで発信することによりプラスアルファで理想通貨をもらえる仕組みです。

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宮古島市公式ウェブサイト SNS理想通貨配布の流れ

SNS投稿の場合には、
1Mゲット ← 1投稿
5Mゲット ← 3投稿
10Mゲット ← 5投稿
20Mゲット ← 10投稿
50Mゲット ← 15投稿

宮古島市公式ウェブサイト

理想通貨の使い方

エコ活に参加して集めた理想通貨は島内の協力店でのみ利用ができます。理想通貨を協力店で使うことは、エコ活を応援しているお店や企業を支援することに繋がります。

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理想通貨の説明裏側

ここで一つこのプロジェクトの肝になることは、理想通貨に共感した協力店はその理想通貨を”換金できない”ことです。一度使用された理想通貨は後日宮古島市が回収し、またエコ活をする人々へ回る「共感経済」として成り立っていることが、このプロジェクトの面白いところでもあります。

人間だけの軸に重きを置いていない_。

このことが「共感経済=ボランタリー経済」を循環させる明確なスイッチになっているのではないでしょうか。

島内を存続させるエコ活には関心が高いのだけど、普段は仕事で忙しくてなかなか自分が参加できないけれど、何かできることはないかと考えている人々が多いことがワークショップを通じてわかったことだと言います。どのお店も、エコ活に参加した人への感謝の気持ちを奉仕の気持ちでお返しする、つまり「ボランタリー経済」として成り立っているのです。

「志」と「使命感」があれば、ボランタリー経済が動き出す――田坂広志

社会起業家やソーシャルイノベーションに知見がある多摩大学大学院名誉教授の田坂広志さんは、1995年頃に起きたインターネット革命以降、ボランタリー経済が21世紀を変革させるものだと言います。

ボランタリー経済とは、すなわち、「自発性の経済」。人々が、善意や好意など、自らの自発的意志によって行う経済活動である。これに対して、現在の資本主義社会において支配的となっているのが、人々が「貨幣」の獲得を目的として行う経済活動、「マネタリー経済」(貨幣経済)である。

しかし、このボランタリー経済とは、実は、人類最古の経済原理でもある。なぜなら、「貨幣経済」が生まれてくる前には、「物々交換経済」(バーター経済)が支配的であり、さらにその前には、善意や好意によって貴重な財貨を相手に贈る、「贈与経済」と呼ばれる経済原理、すなわちボランタリー経済が、人類の社会やコミュニティにおいて支配的であったからである。

alterna ウェブ革命は、ボランタリー経済を復活させる―田坂広志 オルタナティブ文明論 第4回

理想通貨が使えるお店(協力店)

集めた理想通貨が使えるお店は、宮古島市の公式ウェブサイト「eco island」に一覧で一般公開されています。飲食店、美容院、病院、雑貨店…など、島内で活動する色々なお店で利用ができます。

割引クーポン券のような感覚で使えるお店が多く、例えば飲食店では5Mで50円、10Mで200円、20Mで500円引きであったり、美容院であれば200Mでトリートメントが無償でサービスされるといった具合です。基本的には協力店様側のボランタリー経済で活動が回っていることもあり、換算レートはお店それぞれで異なっているのも、また面白いところです。

まとめ

本来人間が持っている想いやりの気持ちが循環する経済圏で、自然や動物、そしてそこに住む人々が豊かになる素晴らしい取り組みだと思いました。

いくら儲かるのか、生産性は何パーセント上がるのか、原価をどれだけ下げれるのか_。このような資本主義の考え方とは別軸で生み出された理想通貨は、今注目される技術革命の「ブロックチェーン」にも精通するものだとも感じ取りました。

1995年頃に起きたインターネット革命(WEB2.0)以降、様々なウェブサービスやスマートフォンアプリが普及して驚くほどに便利になり、全てのものは効率化されてきました。特にインターネットでモノやサービスを購入できる仕組み「Eコマース」は1番の革命だと個人的には思っています。昨今では、WEB2.0革命から30年近く経ち次の技術革命「ブロックチェーン(WEB3.0)」技術が生まれ、情報革命から価値革命が次世代のインターネット革命として注目されています。

より便利になり過ぎる世の中も素晴らしいですが、一方で本来の人間らしさ、人と人との生身の関わりや、生かされている自然を想いやる気持ちはそれ以上に大切にしたいと思います。